2008年12月01日

浦安けいざい学入門
ミニコミ紙 活発な情報伝達も文化
明治大学商学部教授 水野勝之

 本欄は最終回となりました。連載回数は50回余、浦安のために微力を尽くすことができればという思いで続けて参りましたが、「うらやすニュース」が休刊ということになり、ひとまず擱筆といたします。
 「産業文化」という言葉があります。伝統的な産業は文化であるということです。石見銀山は産業文化として世界遺産に登録されましたし、富岡製糸場はその暫定候補として登録されています。浦安にはそのような大規模な2次産業はありませんが、3次産業に関しては産業文化の宝庫です。「うらやすニュース」はわたしたち浦安の産業文化のひとつだったといえましょう。
 浦安では、コミュニティー紙、行政の広報紙、民間のホームページなど情報伝達のメディアが豊富です。コミュニティー紙では、「うらやすニュース」をはじめ、「浦安新聞」「市川よみうり」などが定期的に発行されています。最近では、ウェブの「新浦安ナビ」が市民に情報を伝達する役割を果たしています。
 そのようにいくつもの情報伝達のメディアがある中で、「うらやすニュース」はコミュニティー紙のリード役を果たしてきました。中立の立場で、さまざまな団体の催しやその成果について報じてきました。行政の立場とは違う、民間ならではの浦安の市民・産業の情報がわれわれに届いていたのも、「うらやすニュース」があったからです。
 元町、中町、新町の地域情報に加え、ディズニーリゾートや鉄鋼団地という大きな産業の情報まで、横断的に情報伝達の役割を十分に果たしてくれました。もし、「うらやすニュース」のような客観的、かつ、精力的なメディアがなければ、隣人や地域のことが分からず、新しい街独特のコミュニティーの断絶が生じていたことでしょう。
 私は地域連携の研究のため、さまざまな地域を調査してきましたが、浦安のように、地域紙が充実している地域はほかにありません。私の勤める明治大学のある千代田区では政治的な話題を含むコミュニティー紙はよく目にしますが、純粋な住民のための情報紙は多くありません。また、群馬県の嬬恋村では官報はあるものの、民間のコミュニティー紙はありません。もちろん、その他多くの地域でも、浦安のように、人口に比して紙数が多く中身が充実しているという例はほとんどありません。
 「うらやすニュース」は、面数が30ページ前後になることもあり、一般の新聞紙面と比肩する紙幅にもなりました。その情報量は実に豊富でした。私が担当した「浦安けいざい学入門」では、浦安の中の情報収集だけでは足りず、浦安での社会実験を繰り返し、その結果から提言を行ってきました。しかしながら、自分の研究成果以上に「うらやすニュース」が客観的情報を収集してきたことはより努力を要するものであったと思います。
 ミニコミ紙という浦安ならではの産業文化で役割を果たしてきた「うらやすニュース」が今回をもって休刊するのは寂しい限りです。市民に生き生きとした情報を提供してきた「うらやすニュース」の復刊を期待しています。