2008年07月01日

<青木幸作のLet's do sports>
オープンウオーター
水泳は四肢が完全でなくても十分にできる

 抵抗を極限まで抑えたという競泳用の〝魔法の水着〟。一度は試着してみたいものです。凡人には窮屈なだけかもしれませんが。
 水着ばかり注目され、代表選手の避抵抗技術が取り上げられてはいませんが、その技術は今や日本は世界一です(だと思います)。室内プールの普及で、効率の良い泳ぎを習得する場に恵まれ、他国の指導者が絶賛する平泳ぎの避抵抗技術は、小学生でもできます。ただ、当然のことながら推力を増大させなければ速くは泳げません。
 推力は大部分、四肢の動きによって作り出されます。大きさ、柔らかさ、技術に体力要素が加わり、進む力となるわけで、どれが欠けても世界では戦えません。
 ところが、今年5月、世界オープンウオーター(遠泳)選手権の女子10キロの部で入賞を果たした南アフリカのナタリー・デュトイト選手には、左足(膝下)がありませんでした。
 デュトイト選手が左足をなくしたのは今から7年前、朝練からの帰りに起きた交通事故によるものでした。進む力を生み出す一部が失われ、五輪出場を期待した周囲は絶望しました。しかし、本人はあきらめず、1日4時間のトレーニングを再開。
 水泳は、スピードを望まなければ、四肢の一部が不全になっても十分にできるスポーツ。そして、クロールは距離が長くなればなるほど省エネとして腕中心になる泳ぎ。そういった方の健康運動としても最適です。幸い、北京五輪に「マラソンスイム」としてオープンウオーターが採用され、世界選手権で10位までに入れば無条件で五輪出場できることになりました。
 そのレース、2時間も泳いで、ゴール直前まで30人以上のデッドヒート。ラストスパートは温存していたキックを駆使してスピードアップを図るのがセオリーですが、デュトイト選手はそれに負けず、見事4位に。その敢闘精神に、他の選手も、役員も、心を打たれ泣いていたそうです。本番ではどんな感動があるのでしょう。
 (健康運動指導士、サッポロスポーツプラザPAL総支配人)