2007年07月01日
乳がんで悲しまないために(10)
手術は縮小傾向が続く
東京臨海病院 外科医長・乳腺外科 鈴木貴久
できれば手術はしたくないというのは、どんな方でも思うことでしょう。特に、乳がんの手術では乳房を失ったり、乳房が変形したりと見た目の変化が大きく出ます。また、わきの下にある腋窩(えきか)リンパ節を郭清(全部切除)した場合は患部側の腕の違和感やむくみといった合併症もあります。
以前は大胸筋も含めて切除されていたのが、胸筋温存手術にかわり、さらに乳房を残す乳房温存術へと術後の見た目に関しては発展してきました。また、乳房再建術も進歩しており、最近ではかなり術前の乳房の近いものができるようにもなりました。
乳がんの手術の術後合併症のほとんどは、腋窩郭清によるものです。こちらに関しても、最近では腋窩郭清を省略するセンチネルリンパ節生検というものが広く行われるようになりました。
センチネルとは見張り役という意味であり、腋窩のリンパ節群の中で最初にがんが転移するリンパ節のことです。術中にこのセンチネルリンパ節を調べることにより、その先にがんの転移があるか無いかを判断します。
センチネルリンパ節に転移が無ければ、その先にがんの転移がないものと判断し、腋窩の郭清を省略します。センチネルリンパ節に転移があった場合は、その先にもがんが転移している可能性があるとして通常の腋窩郭清を行います。
腋窩郭清が省略できれば、術後の腕の違和感やむくみに悩まされることもなくなります。また、乳房温存術とセンチネルリンパ節生検だけの手術で済めば、入院期間もかなり短縮されます(当院では術後約2~3日で退院)。
今の時点では、乳がんの根治治療をする際に手術は避けて通れませんが、最近では術前化学療法といって、手術の前に抗がん剤を投与し、腫瘍(しゅよう)を小さくしてから手術をするということも行われています。
この治療をした場合、中には抗がん剤だけでがんが消えてなくなる場合があります。しかし、だからといって手術をしなくて良いというわけではなく、きちんと手術をして、病理学的(顕微鏡の検査)にがんが本当に消えたかどうか確認が必要となります。
今後、手術をしなくてもがんが消えたかどうか、例えばMRIやCT検査などで調べる方法が確立されれば、近い将来、乳がんで手術をしなくても良くなる日が来るかもしれません。
(江戸川区臨海町1-4-2 TEL03-5605-8811)
