2007年06月01日
乳がんで悲しまないために(9)
妊娠や授乳の悪影響は少ない
東京臨海病院 外科医長・乳腺外科 鈴木貴久
ほんの少し前まで妊娠または授乳中の乳がんは非常に予後(術後の経過)が悪いとされてきました。
妊娠・授乳により大量に女性ホルモン(エストロゲン)が増え、乳がんを進行させると考えられてきたのです。
さらに、妊娠・授乳中は乳房が張っているため、発見が遅れがちになり、より進行してしまうという理由もありました。
しかし、最近では妊娠・授乳期でも予後に差がないとする論文が多く出てきました。同じ大きさ、同じ進行度の乳がんを比較した場合、妊娠をしている人と妊娠をしていない人の乳がんにそれほど違いがなかったのです。
また、妊娠中絶が予後を改善しないとの報告も見られます。つまり、妊娠を継続することも可能ということです。
ただし、妊娠早期(16週以前)では手術による麻酔で流産が増加したり、抗がん剤による奇形率が増加したりすることがあります。
さらに、乳房温存術を行った場合は術後に照射する放射線の影響も考えなければなりません。妊娠中期以降であれば、乳がん治療が胎児に与える影響は少ないとされていますが、いずれにしても、外科医、産婦人科医、小児科医、麻酔科医、放射線科医との連携が重要になります。
同様に、乳がんの術後に妊娠をしても、患者さんの生存率に悪影響を及ぼさないことも分かってきています。術後に使用した薬物(抗がん剤、ホルモン剤など)が、その後の妊娠・出産において奇形や流産などに影響することはないことも分かっています。
しかし、妊娠・出産の時期に関しては慎重な判断が必要です。超早期がんである非浸潤性乳がん(がん細胞が乳管内にだけ増殖し、周りの組織に浸潤していない段階)であれば、術後早期からの妊娠・出産に問題はありませんが、浸潤性乳がんであった場合は再発の事を考慮しなければなりません。
妊娠とは関係なく、手術の時のがんの進行度で再発の危険は決まります。抗がん剤はもちろんのこと、ホルモン剤を使用している間は妊娠できません。
妊娠を希望する場合はそれらの治療を中止または終了してからとなります。再発や転移は術後3年以内に起こることが多いので、少なくとも2年間は術後補助療法を続けるべきです。
大事なのは出産後もお母さんが元気であることで、再発により赤ちゃんがひとりぼっちになるような事態は絶対に避けるべきでしょう。
(江戸川区臨海町1-4-2 TEL03-5605-8811)
