2007年03月01日

乳がんで悲しまないために(6)
進行していても治療法はある
東京臨海病院 外科医長・乳腺外科 鈴木貴久

 最近はピンクリボン運動や公共広告機構のCMなど乳がんに関する啓蒙活動が広がっています。また、インターネットや雑誌でも乳がんに関する情報があふれています。
 しかし、非常に残念なことに、かなり病状が進行してから初めて外来に訪れる患者さんもいらっしゃいます。その多くの方は乳房にしこりがあることに気づいていながらそのままにしてしまい、いよいよ痛みが出てきたとか皮膚に潰瘍(かいよう)が出来てしまったということで受診されます。
 その理由としては、病院で乳がんと診断されてしまうのが怖い、仕事が忙しくて、つい放っておいてしまった、家族の世話が忙しくて、自分の体を気にしていなかった、などいろいろあります。中にはこのまま死のうと思っていた、というケースまであります。
 心情的には乳がんと診断されるのが怖いというのは分かります。すでにしこりが5センチ以上あったり、大きなリンパ節転移がある進行乳がんの患者さんの多くは内向的な方で、家族にも相談できず、一人で悩みを抱え込んでしまう傾向にあります。誰でもがんと言われれば落ち込むし、悲しい気持ちになると思います。
 進行乳がんであっても治療は通常の乳がんとほぼ変わりません。基本的には化学療法による全身治療が優先されますが、遠隔転移(肺、肝臓、骨などへの転移)がなければ手術が優先されることもあります。
 乳がんが進行して腫瘍(しゅよう)が大きくなると、がん細胞が皮膚へ広がっていきます。そのうち皮膚に潰瘍ができますが、その際、乳房から悪臭が出ることがあり、QOL(Quality of Life=生活の質)が落ちることになります。
 そういった場合には局所治療として手術によってがんを取り除くことが優先されます。全身の状態が悪く、手術が困難な場合は放射線と抗がん剤を組み合わせた局所コントロールをすることもあります。
 いずれにせよ、乳がんの場合は、進行していたとしても治療の余地が残されており、化学療法が効けば、すぐに命にかかわることもなくなります。
 また、ひとつの抗がん剤が効かなくても、あきらめずに別の抗がん剤治療を繰り返していけば、いずれその人にあった抗がん剤も見つかります。
 化学療法には抗がん剤だけでなく、分子標的治療薬という新しい分野の薬も次々と開発されています。
 以前であれば非常に予後(術後の経過)が悪かった乳がんでも、こういった新薬のおかげで命を救われる場合も多々あります。
 現在、治療を受ける前に、がんの遺伝子を解析することにより、その人に合った治療を見つける研究が進んでいます。テーラーメード(またはオーダーメード)治療といいますが、近い将来、つらい治療を繰り返さなくても自分に合った治療を見つけることができるようになるでしょう。
 しかし、何はともあれ乳がん治療の基本は早期発見、早期治療に尽きますので、ご自分の乳房に何か気になることがあったら、家族に相談するか、すぐに近くの専門外来を受診しましょう。
 (江戸川区臨海町1-4-2 電話03-5605-8811)