2006年04月01日
第17回浦安文学賞決まる鈴木さんに栄冠
佳作は雨宮、宮川さん 奨励賞に5作
第17回浦安文学賞(浦安ニュース社主催、浦安市、市教育委員会後援)は3月16日、作家、渡辺淳一氏による選考の結果、鈴木忠幸さん(27)の『落日』に決まりました。大賞受賞作では初の時代物。
佳作は雨宮清子さんの『約束』と宮川直子さんの『人のいい女』の2作。
奨励賞には舞出勉さんの『花吹雪の宴』、山下奈美さんの『天蓋(ヴォルト)』、宮坂朝子さんの『インジェラ』、田中昭雄さんの『花海棠』、宇多祐治さんの『イニシャルが同じだった』の4作が選ばれました。
授賞式は5月18日、シェラトンホテルで行われます。
![]() |
| 鈴木忠幸さん |
![]() |
![]() |
| 雨宮清子さん | 宮川直子さん |
![]() |
![]() |
![]() |
| 舞出勉さん | 山下奈美さん | 宮坂朝子さん |
![]() |
![]() |
| 田中昭雄さん | 宇多祐治さん |
浦安文学賞は「うらやすニュース」創刊10周年を記念して平成2年に設定。今回は、昨年12月20日の締め切りまでに日本全国はもとより、海外在住の日本人などから前回より40編多い274編の応募がありました。うち市内からは13編、県下から(市内を除く)31編。
今回も恋愛小説、時代小説、ユーモア、ミステリーなどさまざまなジャンルにわたっていました。最終選考に残ったのは10人。
今回の入賞者は次の通りです(敬称略)。
[浦安文学賞]
▽鈴木忠幸=昭和53年5月、東京生まれ。中央学院大法学部卒。無職。埼玉県春日部市在住。
『落日』は、剣の達人といわれながら、目の病で次第に視力を失っていく武士の話。視界が霞んできたことを誰にも告げず、不器用に一人耐える武士の苦悩と葛藤が淡々と描かれ、父の病を察し、陰で支えようとする息子との心の交流がしみじみとした味わいを醸し出しています。
[佳作]
▽雨宮清子=昭和18年8月、静岡県生まれ。鶴見女子短大卒。無職。静岡市葵区在住。
『約束』は、10歳の時、母からの虐待に耐えかねて、踏切に飛び込もうとした夏子とそれを止めた3つ上の〝お兄ちゃん〟が10年ごとに会うという物語。母親のいじめは夏子が大人になっても、止まることがありませんでしたが、お兄ちゃんの励ましを支えに「あと10年」「あと10年」と無事に還暦をえます。この10年の報告を胸に約束の場所へ向かった夏子を待っていたものは……。
▽宮川直子=本名・大山直子。昭和51年6月、大阪府枚方市生まれ。京都産業大外国語学部中国語学科卒。主婦。枚方市在住。
『人のいい女』では、妻子ある男が、ホステスのアルバイトをしていた大学生の文子と出会い、恋仲になって3年たったころ、明るく「結婚することになった」と告げられます。しかも、2年も前から付き合っていると聞いて、怒りと未練で落ち込む男の胸に、妻への罪悪感と感謝の念が湧き起こりますが、妻の反応やいかに。
[奨励賞]
▽舞出勉=昭和22年1月、神奈川県伊勢原市生まれ。早稲田大教育学部卒。会社員。伊勢原市在住。
▽山下奈美=昭和47年7月、静岡県生まれ。津田塾大学芸学部卒。主婦。静岡市在住。
▽宮坂朝子(ともこ)=昭和30年7月、東京都目黒区生まれ。独協大法学部卒。主婦。長野県松本市在住。
▽田中昭雄=昭和25年7月、福岡県生まれ。早稲田大政治経済学部卒。経営コンサルタント。杉並区在住。
▽宇多祐治=昭和30年12月、札幌市生まれ。弘前大人文学部卒。会社員。浦安市東野在住。
〈選考委員・渡辺淳一氏(作家)講評〉
小品らしくまとまる大賞作
多かった先が楽しみな作品
今回はずば抜けた作品はなかったものの、全体のレベルは上がっています。サナギからチョウになる直前のような、あと一歩、努力と何かのきっかけで弾けそうな、この先が楽しみな作品が多く見られました。
大賞の『落日』は時代物で、目が悪くなり、無謀に飛び出さずに耐えている武士と父を気遣う息子の話。文章も落ち着いていてわかり易く、小品らしくまとまっています。ことさらにドラマを作ろうとしてるわけではないが、親子の静かな思いやりにしみじみとした味わいがあります。
佳作の『約束』は、この娘だけが母からいじめられ、それでもけなげに前向きに生きていく姿はよく書けていて、元気の出る話です。ただ、なぜそこまでいじめられるのか、娘と母の関係がよく分かりません。ラストはやや感傷に流れて、甘くなったようです。
『人のいい女』は妻と浮気相手の女、2人の女の対比が面白い。女性の何ともいえないすごみがよく書けています。2万円を拾ったらどうするかという話がモチーフになっていますが、人間はそう単純に分類できるものではないし、少し作り過ぎかなと感じました。
奨励賞の『花吹雪の宴』は、今、社会的に関心を集めている「老い」を扱い、こういう死に方もあるのかと考えさせられました。ただ、だれの視点で書くかという人称が作中でぶれていて、不安定なところが気になります。テーマもいまひとつはっきりせず、欲求不満が残ります。
『天蓋(ヴォルト)』は棒高跳び仲間との、友情とも共感ともつかない感情が描かれていて新鮮ですが、それだけで終っているところが残念です。
『インジェラ』は外国人の子を宿し、エチオピアに行くという愛娘を狂鬼のごとく追い出して15年、その孫娘が訪ねてくる話。話の進め方に無理がなく、何を書こうとしているのかは、よくわかります。ただ、ラストも含めて、お涙頂戴的で話を作りすぎたところがマイナスです。
『花海棠』は母親と大叔父のことを息子の視点からおしゃれに書いています。読者は、この2人のあいだをいろいろ想像しながら読み進むものですが、思わせぶりなままラストで肩すかしをくらわせるところが不満です。
『イニシャルが同じ』は筋トレに励む女性と太りすぎで動けない友人という対照的な組み合わせが斬新です。しかし、なぜ猛烈に食べずにはいられないのか、という内面的な問題や2人の間の葛藤(かっとう)を書き込まないと、小説とは言えません。結論が「イニシャルが同じ」だけでは困ります。
2次選考に44人 最終選考は10人
第17回浦安文学賞の選考で2次選考に残ったのは44編、最終選考に残ったのは10編でした。
2次選考以上に残った人は次の通り(入選者は除く。敬称略)。
[最終選考]
▽『あなたの舟で』藤井加奈子(東京都八王子市)▽『鏡の中を歩いた日』長嶋絹絵(横浜市金沢区)
[2次選考]
▽門倉暁(浦安市)▽古谷早百合(市川市)▽小川栄(同)▽葵実織(千葉市)▽五寺美幸(市原市)▽北川詩乃(北海道登別市)▽土井尻憲宣(同岩見沢市)▽木山きよし(青森県五所川原市)▽原田武信(岩手県北上市)▽北野真理(福島市)▽高橋惟文(山形市)▽惟茂紅(群馬県前橋市)▽森まりも(埼玉県北本市)▽阿部王子(東京都江東区)▽高見圭一(同板橋区)▽吉澤大輔(同大田区)▽比留間裕子(同武蔵村山市)▽小暮更紗(神奈川県大和市)▽てらしまくにお(同横須賀市)▽桑嶋ミキト(滋賀県神前郡)▽近藤英二(同彦根市)▽中村あき(奈良市)▽山村昌大(大阪府堺市)▽岩田信義(神戸市東灘区)▽谷ユリ子(同)▽岡田悦夫(同明石市)▽幡英基(岡山市)▽吉田淑子(岡山県津山市)▽二宮春将(広島市)▽武田典子(愛媛県今治市)▽古賀和代(福岡県三池郡)▽井邑勝(同北九州市)▽富崎喜代美(佐賀県佐賀郡)▽雲林院敏子(大韓民国)








