2006年03月01日
〈連載:息子への手紙〉
時代の空気を吸う
㈱明和地所 代表取締役 今泉浩一
(1)今の日本に流れている空気はどんな空気だろうか? と考えてみた。
空気には味もにおいもないので、気づかないが、実は空気がないと5分と生きられない。例えば、5,000メートルの山でお喋りしていると、酸素不足で高山病になってしまう。高い山の上では登る前から腹式呼吸で深い深呼吸を繰り返して酸素の吸収を心がけねばならない。また、もし、一酸化炭素が混じっている空気を吸うと、3分で死んでしまう。どんな空気を自分が吸っているのか気を配った方がいい。
それと同じで、人はその時代の空気を吸って生きている。自分では気づかずに悪い空気を吸っているかもしれないのだから、人は今、自分の周りを流れている時代の空気がどんなものかを知っていた方が良い生き方ができると思う。
(2)今、日本に流れている時代の空気は、いろんな将来への不安が混じり合った空気ではないか、と思う。
少子高齢化により人口減少時代に入っていくので、年金は減少するだろう。これからリタイアしていく55~59歳の団塊の世代の生活はどうなるのだろうか?
少なくなる若者たちの中にはニート(65万人)やフリーター(400万人)が多いが、若い世代はこれからの日本を背負っていけるのだろうか?
地球温暖化で人間はいつまで生きられるのだろうか?
ブリックスの発展により石油エネルギー不足が今後、どう日本に影響するか?
小泉構造改革が途中で消えそうだが、今後の日本は大丈夫か?
ヒルズ族のように新しい事業家が出てきて高い利益を上げているが、これは本物か?
貧富の格差が広がる社会は住みにくくなるのか?……等々と悩んだらきりがないほどの不安な空気で満ちている。
しかし、他方で、日本人個人個人の身の回りでは、豊かさが満ちている。ホームレスは日本に600万人ほどいるようだが、食べ物に困って餓死した者はいないどころか、太って糖尿病になる者もいるらしい。そこら中のゴミ箱には栄養豊富な食べ物や生活用品がいくらでも捨てられているからである。
ニートやフリーターは、親の庇護(ひご)のもとで「自分のやりたいことをやっている」だけだ。親に頼っているとはいえ、よく見れば、結構、自分らしい生き方をしている豊かな時代の自由人なのかもしれない。これが許される豊かさが日本の空気に満ちていると言うことだ。
そんな今の日本に流れている空気とは何だろう? うーん、思い切って言えば、「自分らしく生きる」という空気ではないだろうか。
(3)ところで、最近、美浜東エステートを買って、リノベーションマンションとしてオープンルームをやった。3週間で90人くらいの人に見ていただき、「素晴らしい!」「こんなことができるのか!」「全く違う部屋になった」「駅からこんなに近くで、こんなに奇麗で住みやすい家になるのか!」「感動しました!」……と、見に来たほとんどの人に言っていただけた。
その中でも同じ美浜東エステートに住んでいる方が一番驚かれ、感動されたようで、とてもうれしかった。「皆さんの住んでおられる美浜東エステートはこんなに素晴らしい所なんですよ!」と言いたかったからだ。
私は思う。「今の時代の空気」が「自分らしく生きる」であれば、「自分の住まい」も「自分らしく生きるための住まい」でなければならない。ところが、日本のマンションは大手不動産業者が、購入者のリサーチを繰り返して造るので、5~10年くらいの新しい間は利用者に使いやすいが、10年以上経つと時代が変化するので、間取りや住設機器が時代に合わない物になって使いにくくなり、「自分らしく生きたい思いと食い違ったマンション」になってしまっている。特に、20年以上経つと、間取りや住設機器を少し換えるくらいのリフォームではどうにも我慢できないくらいの時代の空気の違いが出てきている。ここのところを何とかしてあげれば、喜ばれるのではないか、と考えたのである。
分析すると、マンションは鉄骨や鉄筋とコンクリートでできた躯体部分と間仕切り壁や風呂・トイレ・キッチン等の住設機器でできた内装部分からできているので、躯体だけ残したスケルトン(骨組み)状態にして、内装部分の部屋と住設機器を全部新しく、今の時代にあった物に取り替えてしまえば、全く新しい「自分らしく生きたい住まい」に再生できる。これをリフォームを超えるリフォーム、リノベーションマンション、または、リニューアルマンションと呼んでいる。これが美浜東エステート9-901号室でやった正体だ。
(4)では、今後、どんな中古再生事業を考えているかについてだが、
マンションは「交通の便、買い物の便、教育環境・衛生環境・文化環境・娯楽環境が良い地域」(以上は土地の評価)で「角部屋や南向きのその部屋の位置が良い」「耐震性に問題のない」「管理の良い」(以上は躯体の評価)古いマンションに限って購入して、その部屋の価値を上げるリノベーション(内装部分の評価を上げる)して住みやすい部屋にして販売することである。リフォームには以下の3段階がある。
・壁や床、ふすま・畳などの表面だけを奇麗にして販売する第1のタイプ。
・表面リフォームのほか、キッチンセット・バス・トイレなどの水回の取り替えや間取りの変更までして販売する第2のタイプ。
・壁・天井・床の全てを取り壊し、スケルトン(骨組み)だけにして、今の生活にあった全く違う部屋にするリニューアル(リノベーション)マンションにして販売する第3のタイプ。(居住者のリノベーションだけを請け負うことも事業化している)
第1と第2のタイプは、今までもやってきたが、第3のリノベーション物件は、今回初めて、美浜東エステート9-901号室でやった。美浜東エステートは、築26年経過しているが、公団仕様で堅固に建てられており、管理も良く、積立金が5億8,000万円もあり(躯体分の評価が高い)、駅から1~8分の位置にあり、海の見えるマンションで、土地の持ち分が24坪もある(土地の不動産評価が高い)。
土地価格は24坪×200万=4,800万円、躯体価格は23坪×40万=920万円で、土地部分と躯体部分だけで5,720万円の価値があるのに、なぜ美浜東エステートが3,000万円以下でしか取引されていないのか考えた。それは、新築のマンションと比べて、内装部分の間取りがちまちまと小さくて古く、収納部分が少なく、キッチンセットなどの水回りの設備機器が古くて汚い(内装部分の評価が低い)からである。ならば、躯体はしっかりしているのだから、内装部分を全部新しく作り替えれば、価値が戻るのではないか。
そこで、躯体だけ残して、壁、天井、床の全てを取り壊し、水漏れが心配な給排水の配管を全部新しく取り替え、床を3センチ下げて二重床にして、床暖房を入れ、壁の位置を変えて、収納を多くして、窓には断熱効果の高いペアガラスを入れた。ドアも全部取り替えた。廊下を一部リビングに取り込み、23畳の広さにして、家族が集まる空間LDKを一層充実させた。そんな風に内部を全部新しく作り替えたので、その内装費用が850万円である。もう古いとは言わせません!
これで、新しいマンションと比べてもどこも見劣りしないのだから、内装価格850万円と躯体価格920万円と土地価格4,800万円を合算して、6,570万円の価値が誰でも判るように表面に出たと思う。売り出し価格の3,950万円がいかに安いか、判る人には判るはずです。
首都圏には1,000万戸の中古マンションがある。ここに住む人は、「自分らしく生きるための住まい」に住めなくて、不満がたまっているはずだ。そこで私の出番だ。今後も中古マンションの本当の価値を掘り起こして、「なるほど、素晴らしい!」「これが私の欲しかった住まいだ!」と言っていただけるようなリノベーションマンションをつくり出していくつもりだ。人口減少時代となった今後の日本は、「新しく建てるだけではなく、古い建物の本当の良さを引き出して住みやすく作り直し、自分らしく快適に住む時代」なったと思っているからである。
一戸建ては、その地域の評価が高い、角地や南道路で、古くなった家で、適正価格のものを購入して、「耐震診断」して、「耐震補強工事」をして、「耐震基準証明書」を取得して、安心住宅にして、リフォームして奇麗で住みやすくして、価値を出して販売することを考えている。
賃貸用のマンションも同じ流れだ。今後は少子化で若者が少なくなっていくから、若者の好む部屋に変えていかなければ、空室の山になるだろう。ミニキッチンは使いやすいオシャレなセットに換えよう。ワンユニットの風呂・トイレは、別々のシャワー室とトイレ室にしよう。今後は一人暮らしや二人暮らしが増えるので、間取りはチマチマと区切らないで、できるだけ広い部屋に換えよう。それもお金をかけるのではなく、シンプルでオシャレな工夫をすればいいのだ。やることが多くて楽しいね。
(2006年2月21日記 ㈱明和地所 代表取締役 今泉浩一)
